スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
<< 太陽再び活発化、07年ごろから表面爆発が増加 | main | 科学者倫理 >>

脳科学の今

遠く宇宙の構造までにも思いを馳せる人類。宇宙の果てのことや、今後の宇宙、過去の宇宙と思索を重ねてきた人類。それらの思考を支えているのは我々にとって身近にある「脳」である。一般に「脳科学」と表現するが、その内奥は宇宙のメカニズムの難解さと相通ずるものがある。宇宙を思考することによって、人間と宇宙との繋がりを無意識に連想させる脳のしくみ。最先端の脳科学の現状はどうなっているのであろうか。

1000億個のネットワーク

我々が所属している銀河系には1000億を超える星が存在しているという。そして人類の脳では、電気信号を伝える機能に特化した細胞である「ニューロン」が1000億個以上も集まって、天文学的な規模の情報社会を作っているようである。人間の脳の重さは成人男性で平均約1400グラム、女性は1250グラムと言われている。その中に1000億個以上ものニューロンが互いに情報を交換している凄さは、人類が譬喩するのが難儀なほど神秘的であるということになろう。そしてニューロン同士を繋ぐ役割(情報伝達)を持つ「シナプス」と呼ばれる部位の数は100兆にものぼるというのだ。まさに「気の遠くなる」というのはこのことであろう。どんな人間でもかならず持っている脳だが、それほどの神秘さと複雑さをもって機能しているなどとは普段は考えていないものだ。しかし、意識しようとしまいと脳がめまぐるしく運動していることは、ちょうど地球の自転・公転に見られるように、否応の無い現実である。

脳はそれぞれ担当する部位が定まっている

現在の脳科学では、かなり詳細に脳のどの部位がどんな役割を持っているかを推測している。詳述は避けるが、思考・眼球運動・運動・触覚・空間位置把握・発語・言語理解・視覚・聴覚等のそれぞれの役割がきちんと脳の部位によって分けられているのである。これは私の実感としてあるのだが、目の手術の時に強烈なレーザーを当てられたことがある。その時に脳の一部だけが連続して痛んだことは忘れられない経験だ。入ってくる光の情報量の多さに、脳の方の処理が追いつかないといったような痛さであった。脳の一部だけが痛いなどという、普段は経験しない痛みだけに冷や汗をかいたものだ。「脳のこの辺りで光を感じているんだな」とはっきり知覚できたのだから、驚いたことは言うまでもない。人間は手を怪我したら、「手が痛い」と感じるである。心臓の痛みや筋肉の痛みも「その部位が痛い」と感じるのである。実はこれらも脳が痛さを判別しているのであろうが、私にとって直接脳が痛いという新鮮な経験をしたことは脳内での「視覚」を担当する部位の存在を意識するのに十分な状況証拠であったのだ。
大脳は左右2個の大脳から成立している。大脳半球の表面に位置する部位を「大脳皮質」と呼ぶ。大脳皮質では数万個のニューロンが束になって、円柱状の構造を作っているという。この円柱は「コラム」と称される。大脳の後頭葉や側頭葉では、視覚情報を認識するために、コラムが一つの機能モジュール(機能単位)として働いていることがわかってきたという。このことはコラム一つ一つの機能を洗い出していくことで、コラム間の相互作用などといったメカニズムに肉薄していくことができるという。

ニューロンの役割

ニューロンは「あるしぐさに必要な触覚ニューロンが集まって機能的な集団をつくっている」という。「握る」という行為をするとニューロンが集結し、「触る」という行為でまた別の場所でニューロンが集結する。これはニューロンそのものがそれぞれ違う役割をもっていると解して差し支えないだろう。人間が処理する万般の感覚は、その数だけニューロンの種類があることを示しているのだろうか。
事故などで手足を失った人の多くが「幻肢」を体験するという。顔を触られると失ったはずの手を触られたように感じたり、失った手足の痛みを訴えたりする現象のことだ。ニューロン回路が変化して顔などから入ってくる触覚刺激が、失った手からの入力を担当していたニューロン回路に侵入して興奮を起こすために生じると考えられている。

記憶とは

視覚や体性感覚などを通じて得た情報は、脳の中に記憶される。それはいうまでもない。では、そのメカニズムはどうなっているのだろうか。ここではニューロン同士を繋ぐシナプスが注目される。マウスの海馬にあるニューロンを調べると、スパイン(信号を受け取る側のニューロンの樹状突起にあるもの)の大きさが数分単位で目まぐるしく変わっている様子が観察できる。強い刺激を受けたシナプスほど、スパインが大きく膨らみ、それに応じて信号が伝わりやすくなることもわかってきた。これは記憶の過程だと考えられている「シナプス可塑性」という現象をシナプス構造の形態的変化として捉えたものである。可塑性とは何かということを粘土を例に考えてみる。
粘土は力を加えればたやすく変形する。そして変形した形をその後保ち続ける。このような性質を「可塑性」と呼ぶ。金属は変形させるのにかなりの力が必要だし、ゴムのような素材は力を抜くと元の形に戻ってしまう。すなわち粘土は与えられた力の経験を「記憶」するといってよい。脳内のシナプスも刺激の強さによってその形を変えるが、それが可塑性によって維持されるのである。それが記憶のはしりとなるのだ。
ちなみに人間の大脳の記憶容量をシナプス数から判断して、デジタル的に相対すると、約10TB(テラバイト)の記憶容量となるようだ。10000GBということになろう。パソコンに搭載されたハードディスクで、現在一般的なのでも100〜200GBくらいであろうか。とてもではないが、それほどの容量と記憶が出来る自信はない。だがどうやら人間の脳は凄いらしいことだけはよくわかる数字である。
記憶のメカニズムがわかってくる段階で期待されるのは、「記憶力アップの薬」の登場だろう。また、記憶を消す薬も開発が進んでいるという。これらは当然記憶のメカニズムが解明される中で確実に登場してくるものであろう。海馬で作られた記憶は、一時的には海馬に保持されるが、最終的には大脳皮質に転送され側頭葉の視覚野や聴覚野など、その情報を最初に処理する領域に貯蔵されるものと考えられている。この転送は、主に睡眠中に行われるという学説がある。で、あるとすれば寝ている間に見ている「夢」はこの記憶の為に海馬から大脳皮質への転送の際に現れているのかもしれない。非常に興味深い考察であろう。
小脳の記憶についても触れておこう。ここの記憶のメカニズムはなかなかに面白いものだ。大脳の海馬の記憶が書き込み方式だとすれば、小脳の記憶方式は消去法によって行われるという。人間の運動にミスが生じると、無駄な運動を導くような小脳のシナプスが回路から消されるというのだ。そして必要な残ったシナプスだけが熟練した動きを実現するという。これはスケートなどをしている人間が、転んだ時に、転んだ際の無駄な動きを記憶から消すということらしいのだ。また、小脳は運動だけではなく思考の熟練も担うという説もある。

社会性を司る脳部位−前頭連合野−

脳の中には人間を人間たらしめている部位がある。それが大脳前頭葉の前側を占める「前頭連合野」である。ここが壊れるとどうなるかという具体的事例がある。1848年、アメリカの工事現場監督だったフィニアス・ゲージ氏は、事故によって前頭連合野の大部分を失ってしまった。火薬の爆発によって吹っ飛んできた鉄棒が脳に刺さったのである。事故後彼は奇跡的に一命をとりとめたが、前頭連合野の大部分を失ってしまった。それでも視覚・運動能力にはほとんど障害がなかったという。しかし、人望の厚かった彼の性格は一変して野蛮になり、将来への計画性を持つことも出来なくなってしまったという。覚せい剤や麻薬の類も前頭連合野の活動に影響を与えて人格を崩壊させるらしい。それくらい、前頭連合野は非常に社会性を保つ上で重要な部位なのだ。人間は社会性をもつことで人間らしさを現出しているといえる。上記のフィニアス・ゲージ氏の例のように、温厚な性格の持ち主が急に粗野になってしまうほどの豹変振りは、人間と他動物を大きく分ける社会性の有無の重要さを改めて認識させられるものだ。
この人間の前頭連合野は大脳皮質全体の3割を占めるという。サルだと12%、ネコだと2〜3%、ネズミにいたっては前頭連合野を持たないというから、人間の社会性は圧倒的である。

今後の脳科学研究の方向

脳の中にはニューロン以外にも「グリア細胞」というものが存在する。これはニューロンの10倍近い数であると言われている。グリア細胞はニューロンのような電気的興奮を起こすのではないという。そのためこれまでの脳科学ではさほど重要視されていなかったのであるが、グリア細胞は化学的興奮を起こすことが知られてきた。ニューロンのネットワークとグリア細胞は互いに情報交換しているというのである。まだまだこの研究は緒についたばかりであるが、脳内のこれほどの多量な情報を維持管理するシステムとしてグリア細胞が注目されていることだけは知っておいてよいであろう。今後の研究の成果が期待される。
アメリカでは1990年から2000年までを「脳研究の10年」と定めた。今後の10年は「治療法研究の10年」になるという。具体的内容としては、痴呆症、アルツハイマー、うつ病、統合失調症などの治療法・新薬の登場が期待できるという。まさにそれが実現するのであれば非常に喜ばしいことである。そういった病が「脳の分野」だけに限定されるものなのかどうか議論の余地があるだろうが、多くの人が苦しんでいる病気に回復の光明が見えたことは素直に喜ぶべきである。脳科学研究の発達は人類にとって非常に大きな価値をもたらしてくれるものであろう。
| 科学 | 02:01 | comments(2) | trackbacks(2) |

スポンサーサイト

| - | 02:01 | - | - |
Comment
一風変わった脳内構造のホームページを作成したのですが、もしよろしければ、ご批判願えないでしょうか?
2007/07/01 10:28 AM, from ノース
コメントをありがとうございます。返信が遅れて申し訳ありません。ゆっくりと拝見させて頂きます。
2007/07/17 9:52 AM, from Meishi









Trackback
url: http://science-watch.jugem.jp/trackback/15
うつ病から痴呆になることはありますか?
老人性のうつ病の特徴として、痴呆によく似た症状が出ることがあります。しかし、真性の痴呆とは微妙に症状が異なります。真性痴呆では脳の障害が認められますが、うつ病にともなう痴呆様症状(仮性痴呆)では脳の器質的な異常は発見されません。また、ボケに対して自覚
2007/03/21 6:12 PM, from うつ病を克服し、ストレスフリーな生活を手に入れる方法
http://nou.healthyroad.info/8FAC945D/
小脳小脳(しょうのう、cerebellum)は、脳の部位の名称。脳を背側から見たときに大脳の尾側に位置し、外観がカリフラワー状をした部分である。脳幹の背側に位置しており、脳幹と小脳の間には脳室|第四脳室が存在する。小脳の機能は、運動機能の調整であり、平衡、筋緊
2007/08/07 6:48 PM, from 脳について

12
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
--
>>
<<
--
Profile
Sponsored links
New entries
Archives
Categories
Recent comment
Recent trackback
Mobile
qrcode
Links
Others
無料ブログ作成サービス JUGEM